村上:
空海に対して、何か関心や思いはありますか?
天平:
知識は全然ないんですけれども、紀伊半島がすごく好きなんですよ、僕。ただ旅するのが好きで、その中で空海さんが紀伊半島のいろいろなところをめぐられたという話は知っています。
村上:
なるほどね。紀伊半島には、非常に古くから聖地があるんですね。例えば熊野なんかそうですよね?日本の他の地域とは違った紀伊半島の良さっていうのですかね?
天平さんは紀伊半島の良さっていうものをどういうふうに捉えていますか?
天平:
僕は作曲家ですから、割と感覚から入るんですけれども、このエリアでは何か違うものを感じるんですよ。
というのは、街なかはエネルギーが乱れていると思うんですね。それで、自分の体の周りをコーティングして、いろんな人のエネルギーと交わらないようにしている。だから街なかって疲れると思うんですね。
ところが、紀伊半島の山は、僕にとってすごく自然に受け入れられて、コーティングを取り払って、一体感を感じるんです。そこに僕は、感動というか気持ちよさを感じるんですよ。
村上:
なるほど、確かにね。空海は少年の時ですね、四国から出てきて、そして15歳くらいで、京都で勉強し始めるのですね。かなりきちっとした勉強をするのですけれども、18歳くらいで大学へ行って、その秋か冬にかけて、19歳前後の時に、吉野へ入っているのです。
天平:
はい。
村上:
そして、吉野から南へ1日、そして西へ2日で高野山へ入っていくのですよ。その2泊3日、吉野から山を越えた2泊3日の体験っていうのが、まったくこれまでと違った体験であって、何かに触れているんですよ。15歳から都にいて、都では感じなかったものを感じて、それが、以後の空海を作り出した。
天平:
それは感覚的に感じた?
村上:
そうなんです。感覚なんです。
天平:
じゃあ割と近いものを僕、感じたのかもしれないですね。
村上:
そうなんですよ。感性とか感覚なんです。実はそれが、空海の「原点」です。感性とか感覚ね、先ほど言われた、まさにコーティングしていた都とは違って、ほんとうに、その肌で、毛穴で…。
天平:
一体となる?
村上:
そうそう、一体となれるっていう感覚をもったのが、吉野から高野への、あの2泊3日の旅だったのだと思うのですね。
天平:
そうなんですね。
村上:
それで大学をやめて、そして都を離れて、いろんなところを歩いているんですね。